加齢黄斑変性(Age-related Macular Degeneration: AMD)は、網膜の中心にある「黄斑(おうはん)」に加齢性の変化が起こり、視界の中心が歪んだり暗く見えたりする病気です。欧米では成人の主要な失明原因のひとつとされ、日本でも成人の失明原因の上位に位置づけられる代表的な網膜疾患と報告されており、高齢化に伴って患者数が増加傾向にあります。初期は自覚症状が乏しいことも多く、気づいたときには片眼の中心視力が大きく低下しているケースも少なくありません。
近年は抗VEGF薬の硝子体注射という有効な治療法が登場し、滲出型(ウェット型)加齢黄斑変性については「進行を止める・視力を維持する」ことが現実的な目標となってきました。本ページでは、加齢黄斑変性の仕組み、2つの病型、症状、検査、治療、予防法までを、日本眼科学会・日本網膜硝子体学会の一般的な知見に基づきわかりやすく解説します。
こんな症状・お悩みはありませんか?
- 視界の中心が歪んで見える(まっすぐな線が波打つ)
- 見ようとしたところが暗く・黒っぽく欠けて見える
- 以前より色が識別しにくい・薄く見える
- 新聞・本の文字が読みにくくなった
- 片眼ずつで見ると、見え方に明らかな差がある
- 人の顔の真ん中(目・鼻)だけがぼんやりしている
- 50歳を過ぎて、中心の見え方に違和感を感じることが増えた
- 健診や他院で「黄斑の異常」「ドルーゼン」を指摘された
これらの症状は、加齢黄斑変性のサインである可能性があります。黄斑は視力の約9割を担う最重要部位であり、異常を放置すると中心視力が不可逆的に低下することがあります。気になる症状がある方は、できるだけ早く眼科での精密検査をお受けください。
加齢黄斑変性とは?
加齢黄斑変性とは、網膜の中心部である黄斑(おうはん)に加齢に伴う変化が生じ、中心視力が低下する疾患です。黄斑の直径はわずか数mmですが、そこには色や細かい形を感じ取る錐体細胞(すいたいさいぼう)が集中しており、「文字を読む」「人の顔を見分ける」「車を運転する」など日常生活で必要となる精密な視覚のほとんどを担っています。
加齢に伴って黄斑の下にある網膜色素上皮(もうまくしきそじょうひ)の代謝機能が低下すると、老廃物(ドルーゼン)が蓄積し、網膜色素上皮の萎縮や、脈絡膜(みゃくらくまく)から異常な新生血管(脈絡膜新生血管: CNV)が伸びてくるといった変化が生じます。この結果、黄斑の機能が損なわれ、中心視力の低下・変視症・中心暗点などの症状が現れます。
疫学データ(参考/目安として)
- 欧米では成人の主要な失明原因のひとつと報告されている網膜疾患
- 日本でも成人の失明原因の上位に位置づけられると報告されています(緑内障・糖尿病網膜症・網膜色素変性症などと並んで主要な原因)
- 50歳以上の日本人の約1%程度に発症するとされます(疫学調査による推計、目安)
- 男性にやや多い傾向があり、高齢化とともに患者数は増加傾向と報告されています
加齢黄斑変性は「見えている範囲(視野)」そのものが大きく欠けるわけではなく、周辺視野は比較的保たれます。しかし中心部の視覚が障害されるため、視力検査でみる「視力」は大きく低下し、読書・運転・細かい作業など、生活の質(QOL)への影響が非常に大きい疾患です。
加齢黄斑変性の2つの病型
加齢黄斑変性は、経過や治療方針が大きく異なる2つの病型に分類されます。どちらの病型であるかは、OCT(光干渉断層計)や蛍光眼底造影などの精密検査で判定します。
| 分類 | 萎縮型(ドライ型) | 滲出型(ウェット型) |
|---|---|---|
| 別名 | 非滲出型・Geographic Atrophy(地図状萎縮) | 新生血管型・Neovascular AMD |
| 病態 | 網膜色素上皮や視細胞がゆっくりと脱落していく | 脈絡膜から網膜下に異常な新生血管が伸び、出血・浮腫(むくみ)を起こす |
| 進行速度 | 年単位でゆっくり進行 | 数週間〜数ヶ月で急に視力低下することも |
| 自覚症状 | 徐々に中心が暗く見える | 変視症・中心暗点・急な視力低下 |
| 日本人の比率 | 比較的少ない(欧米より少数) | 日本人に多いタイプ。特にポリープ状脈絡膜血管症(PCV)が多い |
| 主な治療 | 生活習慣改善・AREDS2サプリメント・経過観察 | 抗VEGF薬硝子体注射を中心に、光線力学療法(PDT)、レーザー光凝固を併用 |
萎縮型(ドライ型)加齢黄斑変性
網膜色素上皮細胞が徐々に萎縮し、その上の視細胞が脱落していくタイプです。進行はゆるやかで、年単位で中心視力が低下していきます。現時点では視細胞の脱落そのものを止める決定的な治療法は限定的で、定期的な経過観察と、条件を満たす方にはAREDS2処方のサプリメントなどによる進行抑制が中心となります。
萎縮型であっても、経過中に新生血管が生じて滲出型へ移行することがあるため、見え方の急な変化があれば速やかに受診することが重要です。
滲出型(ウェット型)加齢黄斑変性
黄斑の下にある脈絡膜から、異常な新生血管(脈絡膜新生血管: CNV)が網膜側に伸びてくるタイプです。新生血管はもろいため、出血したり、血液の成分が漏れ出したりして黄斑に浮腫や瘢痕を生じ、急速に視力が低下します。
日本人には、滲出型の中でもポリープ状脈絡膜血管症(PCV)や網膜血管腫状増殖(RAP)といった特徴的な病型が多いことが知られており、検査と治療の選択にあたっては病型の見極めが重要になります。抗VEGF薬硝子体注射がもっとも広く用いられる治療で、必要に応じて光線力学療法(PDT)との併用などを行います。
加齢黄斑変性の症状の特徴
加齢黄斑変性の症状は、黄斑の中心部が障害されることで生じる特徴的なものが多いです。片眼ずつに起こることが多いため、両眼で見ていると気づきにくく、片眼を覆って初めて異常に気づくこともあります。
変視症(へんししょう)
まっすぐな線が波打って見える、物が歪んで見える症状です。黄斑部に出血・浮腫・膜形成が生じると、網膜の視細胞の並びが乱れ、像が歪んで認識されます。ドアの枠・カレンダーの罫線・タイルの目地などで気づきやすい症状です。
中心暗点(ちゅうしんあんてん)
視界の真ん中が暗く見える、黒い影のように欠けて見える症状です。視点を当てた先のものだけが見えにくく、周囲は見えているのに「見たいものが見えない」という特徴的な見え方になります。読書時に文字の一部が消える、人の顔を見ても目や口が見えない、といった形で現れます。
色覚異常・コントラスト低下
錐体細胞が多く分布する黄斑が障害されるため、色の識別がしにくい・色が薄く見える・明暗のコントラストが分かりにくいといった症状が現れます。信号機の色の識別が以前より難しく感じるケースもあります。
中心視力の低下
黄斑は視力の大部分を担うため、障害されると視力検査でみる視力が大きく低下します。一方で周辺視野は保たれるため、「視界全体は見えているのに、真ん中だけよく見えない」という独特の見え方になります。
ポイント: 加齢黄斑変性は片眼ずつ起こることが多い疾患です。両眼で見ていると健眼が補ってしまい、発症に気づかないことがあります。月に1回程度、片眼ずつ見え方を確認する習慣をつけましょう。アムスラーチャートを使うとより簡単にチェックできます。
アムスラーチャートで自己チェック
アムスラーチャートは、黄斑疾患を早期に発見するための簡単なセルフチェック用紙です。方眼状の格子とその中心に点が描かれており、歪みや暗点を自分で確認できます。加齢黄斑変性のリスクがある方(50歳以上・家族歴あり・片眼が既に発症など)は、定期的にチェックすることをおすすめします。
アムスラーチャートの使い方
- 明るい場所で、普段使っている眼鏡・コンタクトを装用したまま行います
- チャートを目から約30cm離して持ちます
- 片眼ずつ、もう一方の眼を手で覆って中心の点を見つめます
- 以下の項目をチェックします
- 線がまっすぐに見えるか(歪んでいないか)
- 中心の点ははっきり見えるか
- 格子の中に暗い部分・かすんだ部分・欠けて見える部分がないか
- 格子のマス目の大きさが均一に見えるか
- 反対側の眼でも同様にチェックします
- 気になる変化があれば、早めに眼科を受診してください
アムスラーチャートは当院で用紙をお渡ししています。すでに片眼が加齢黄斑変性と診断された方、リスクの高い方は、毎日1回・決まった時間に片眼ずつチェックする習慣づけが、反対眼の早期発見につながります。ただし、アムスラーチャートでの自己チェックはあくまで補助的なもので、異常がないからといって加齢黄斑変性でないとは限りません。定期的な眼科受診と併用してください。
加齢黄斑変性のリスクファクター
加齢黄斑変性は複数の要因が関与する多因子疾患です。以下のいずれかに該当する方は、自覚症状がなくても一度眼底検査を受けることをおすすめします。
- 50歳以上の年齢: もっとも大きなリスクファクター。年齢が上がるほど発症率が上昇します
- 喫煙: 加齢黄斑変性の主要な修正可能リスク要因のひとつとされ、非喫煙者に比べ発症リスクが高まる(目安として2〜4倍と報告する文献もあります)と考えられています。受動喫煙も同様のリスクがあると報告されています
- 紫外線・ブルーライトなどの光曝露: 長年の強い光曝露は網膜色素上皮への酸化ストレスを高めます
- 家族歴: 血縁者に加齢黄斑変性の方がいる場合、遺伝的素因によりリスクが高くなります
- 高血圧・動脈硬化・脂質異常症: 脈絡膜の血流障害や炎症を介して発症・進行に関与します
- 緑黄色野菜・魚の摂取不足: 抗酸化物質(ルテイン・ゼアキサンチン)やオメガ3脂肪酸の不足はリスクを高める可能性があります
- 肥満・運動不足: BMIが高い方、運動習慣のない方でリスクが上昇する報告があります
- 白色人種・青色虹彩(参考): 欧米人種や虹彩の色が薄い方はリスクが高いとされますが、日本人においても増加傾向にあります
- 性別: 男性にやや多い傾向があります(日本のデータ)
これらのリスクのうち、喫煙・食生活・光対策・生活習慣病の管理は日常の工夫で改善できる要素です。年齢や遺伝を変えることはできませんが、修正可能なリスクに取り組むことで発症や進行のリスクを下げられる可能性があります。
加齢黄斑変性の検査方法
加齢黄斑変性の診断には、黄斑部を多角的に評価する複数の検査を組み合わせます。当院では以下の検査を症状・病期に応じて実施します。
視力検査・屈折検査
基本となる視力測定です。眼鏡を合わせても矯正視力が出ない場合、黄斑の異常を疑います。経過観察においても、視力の推移が治療効果判定の重要指標となります。
眼底検査(がんていけんさ)
散瞳薬で瞳孔を広げ、眼底カメラや倒像鏡で黄斑部を直接観察します。ドルーゼン(黄白色の老廃物の沈着)、網膜色素上皮の萎縮、出血、浮腫、瘢痕などを確認します。
OCT(光干渉断層計 / こうかんしょうだんそうけい)— 最重要
非接触で網膜の断面をミクロン単位で撮影できる検査で、加齢黄斑変性の診断・治療効果判定でもっとも重要な検査です。黄斑の浮腫、網膜下液、網膜色素上皮剥離、脈絡膜新生血管の活動性などを客観的に評価できます。抗VEGF薬注射の判断・継続の基準としても用いられます。
OCTアンギオグラフィー(OCTA)
造影剤を使わずに網膜・脈絡膜の血管構造を立体的に描出できる検査です。脈絡膜新生血管の有無・位置・形状を非侵襲的に評価でき、造影剤の使用をためらう方にも有用です。
蛍光眼底造影(FA / ICGA)
腕の静脈から造影剤(フルオレセイン: FA、インドシアニングリーン: ICGA)を注射し、網膜および脈絡膜の血管を時系列で撮影する検査です。新生血管の活動性や病型(典型例・PCV・RAPなど)の鑑別に用います。造影剤のアレルギー歴のある方には慎重に適応を判断します。
アムスラーチャート
外来でも歪みや暗点の有無を短時間で確認できるスクリーニング検査として、また自宅での継続的な自己チェックに活用します。
その他の検査
- 細隙灯顕微鏡検査: 眼の前部・硝子体前方の観察
- 眼圧検査: 緑内障などの合併評価
- 色覚検査・コントラスト感度検査: 必要に応じて実施
加齢黄斑変性の治療法
加齢黄斑変性の治療は、病型(萎縮型か滲出型か)と病状により方針が異なります。当院では、日本眼科学会・日本網膜硝子体学会のガイドラインに基づき、以下の治療選択肢をご提案します。いずれも保険診療の対象です。
治療法① 抗VEGF薬硝子体注射(滲出型の第一選択)
滲出型加齢黄斑変性の治療の中心となるのが、抗VEGF薬(血管内皮増殖因子阻害薬)を眼球内(硝子体)に注射する治療です。VEGFは異常な新生血管の成長・血管からの漏出を促す因子であり、これを中和することで新生血管の活動を抑え、浮腫や出血を軽減させることを目的とします。
現在、日本で用いられる代表的な抗VEGF薬(一般名)には、アフリベルセプト、ラニビズマブ、ブロルシズマブ、ファリシマブなどがあります(いずれも保険適応)。どの薬剤を選ぶかは、病型・既往治療・経過などを踏まえて医師が患者さまの病状に応じて適応を選択します。
多くの場合、導入期として月1回の注射を3回連続で行い、その後はOCTなどの検査結果に応じて投与間隔を調整する treat & extend(TAE)法 や PRN(必要時投与)法で継続します。注射は点眼麻酔下に短時間で行われ、外来で実施可能です。
副作用としては、まれに眼内炎・網膜剥離・硝子体出血・眼圧上昇などが報告されており、注射後に強い痛み・充血・視力低下を感じた場合は速やかにご連絡いただきます。
治療法② 光線力学療法(PDT)
光感受性物質(ベルテポルフィン)を静脈注射し、黄斑部に特定波長のレーザーを当てて、異常な新生血管を選択的に閉塞させる治療です。特に日本人に多いポリープ状脈絡膜血管症(PCV)では、抗VEGF薬との併用療法として検討される場合があります。治療後48時間は強い光を避けていただく必要があります。
治療法③ レーザー光凝固術
新生血管が黄斑の中心窩(ちゅうしんか)から離れた場所にある限定的なケースで、新生血管を直接レーザーで焼き固める治療です。凝固部分の網膜機能は失われるため、中心窩に近い病変には行えず、適応は限定的です。近年は抗VEGF薬の普及により選択機会は減少しています。
治療法④ 萎縮型への対応(生活習慣改善・サプリメント)
萎縮型加齢黄斑変性に対する決定的な治療法は現時点で限定的ですが、禁煙・生活習慣病の管理・食事改善に加え、条件を満たす中等度以上の方にはAREDS2処方のサプリメントによる進行抑制が選択肢となります(詳細は次節「AREDS2サプリメントについて」をご参照ください)。定期的な経過観察と、滲出型への移行を見逃さないためのOCTによるフォローアップが重要です。
費用の目安と高額療養費制度
抗VEGF薬硝子体注射・光線力学療法・レーザー光凝固はいずれも保険診療の対象です。抗VEGF薬注射は薬剤費が比較的高額であり、3割負担の方で1回あたり数万円程度の自己負担になるのが一般的です。
1ヶ月の医療費が自己負担限度額を超えた場合、高額療養費制度により所得区分に応じた上限額を超える分は払い戻しを受けられます。また、限度額適用認定証を事前に取得すれば、窓口での支払いを自己負担上限までに抑えることができます。詳細は加入されている健康保険組合(協会けんぽ・国保など)にお問い合わせください。当院でも手続きのご案内が可能です。
加齢黄斑変性を放置するリスク
加齢黄斑変性、特に滲出型は進行が早く、治療開始が遅れるほど視力の改善が難しくなります。放置することで以下のようなリスクが現実となります。
- 中心視力の不可逆的な低下: 視細胞が障害されて瘢痕化すると、その部分の視力を取り戻すことは困難です
- 読書・文字情報の取得が困難に: 新聞・本・スマートフォンの文字が読みにくくなります
- 運転免許の視力基準を満たせなくなる可能性: 両眼0.7の視力基準を維持できず、運転継続が難しくなることがあります
- 人の顔の識別が難しくなる: 知人との会話や家族との日常に支障をきたす場合があります
- 転倒・怪我のリスク上昇: 足元の段差や障害物が見えにくくなり、転倒・骨折のリスクが高まります
- 反対眼への発症リスク: 片眼発症者は反対眼の発症リスクも高まるため、反対眼の経過観察を怠ると両眼視力を同時に失うおそれがあります
- 生活の質(QOL)・精神面への影響: 視覚障害は抑うつ・社会的孤立のリスクとも関連することが報告されています
加齢黄斑変性は、早期発見・早期治療によって進行を抑え、視力を維持することが現実的な目標となる疾患です。「年のせい」と決めつけず、違和感を感じた段階でご受診ください。
加齢黄斑変性を予防するためにできること
加齢黄斑変性には年齢・遺伝など変えられない要因もありますが、生活習慣の改善によりリスクを下げることは可能です。すでに片眼が発症した方にとっても、反対眼の発症や進行を抑えるために重要な取り組みです。
1. 禁煙(もっとも重要)
喫煙は加齢黄斑変性の主要な修正可能リスク要因のひとつで、目安として非喫煙者よりリスクが2〜4倍程度高まると報告する文献もあります。禁煙することで発症・進行のリスクを下げられる可能性が複数の研究で示されています。受動喫煙も同様にリスクとなるため、家族全体での取り組みが望まれます。
2. 紫外線・強い光から目を守る
外出時のサングラス、UVカット眼鏡、つばのある帽子で紫外線を遮りましょう。スマートフォン・PCなどのブルーライトについては決定的な結論は出ていませんが、長時間使用時の適度な休憩(20〜30分ごとに遠くを見る)は眼精疲労予防のためにも有効です。
3. 緑黄色野菜の積極的な摂取
ほうれん草・ケール・ブロッコリー・パプリカなどに含まれるルテイン・ゼアキサンチンは、黄斑に存在する黄色色素(黄斑色素)の材料となる抗酸化物質です。食事でこれらを十分に摂取することは、黄斑の健康維持に良いと考えられています。
4. 青魚・オメガ3脂肪酸の摂取
サバ・サンマ・イワシなどの青魚に多く含まれるDHA・EPA(オメガ3脂肪酸)は、網膜の視細胞の構成成分として重要です。週に数回、魚を食卓に取り入れることをおすすめします。
5. 生活習慣病の管理
高血圧・脂質異常症・糖尿病は、脈絡膜や網膜の血管に負担をかけ、加齢黄斑変性のリスクを高めます。内科と連携して、血圧・コレステロール・血糖を良好にコントロールしましょう。
6. 適度な運動・適正体重の維持
運動不足と肥満はいずれも加齢黄斑変性のリスクとされます。ウォーキングなどの有酸素運動を週に数回取り入れ、BMIを適正範囲に保つことが推奨されます。
7. 定期的な眼科検診
50歳を過ぎたら、自覚症状がなくても年1回の眼底検査とOCT検査を受けることをおすすめします。ドルーゼンなど加齢黄斑変性の前段階の所見を早期に発見することで、生活改善・サプリメントなどの対策を早めに始められます。
8. 片眼ずつのセルフチェック習慣
アムスラーチャートや、新聞・タイル・ドア枠などを利用し、片眼ずつ見え方を確認する習慣を持ちましょう。特に片眼が既に発症している方、家族歴のある方には強くおすすめします。
AREDS2サプリメントについて
AREDS2(Age-Related Eye Disease Study 2)は、米国国立眼研究所(NEI)が行った大規模臨床試験で、特定の栄養素の組み合わせが中等度以上の加齢黄斑変性の進行を遅らせることを示しました。現在、国内外のガイドラインでも、中等度の加齢黄斑変性や片眼に進行した加齢黄斑変性がある方への栄養補充が推奨されています。
AREDS2処方の主な成分(参考)
- ビタミンC(500 mg)
- ビタミンE(400 IU)
- ルテイン(10 mg)・ゼアキサンチン(2 mg)
- 亜鉛(25〜80 mg)
- 銅(2 mg)
AREDS2は前のAREDS処方からβカロテンを除外しています。βカロテンは喫煙者において肺がんリスクを高める可能性が報告されたため、現在のサプリメントには通常含まれません。
ご注意: AREDS2処方サプリメントは、すべての加齢黄斑変性の方に推奨される訳ではありません。初期の方、単純なドルーゼンのみの方、萎縮のみ軽度の方への上乗せ効果は限定的と考えられており、過剰摂取はかえって健康リスクとなる可能性があります(特に亜鉛の高用量、喫煙者へのβカロテン含有製品など)。
市販のサプリメントを自己判断で開始する前に、必ず眼科で病期の評価を受け、適応・用量を主治医とご相談ください。また、他の疾患で服薬中の方は薬剤相互作用の確認も必要です。
よくあるご質問(FAQ)
- Q. 加齢黄斑変性は完治しますか?
- 現時点で、失われた視細胞を完全に元に戻す治療法は確立されていません。したがって「完治」という表現よりも、「進行を抑えて、今の視力をできるだけ長く維持する」ことが治療の現実的なゴールとなります。特に滲出型の方は、抗VEGF薬硝子体注射によって病状が安定し、視力がある程度改善するケースも見られます。一方で、治療を中断すると再発・悪化のリスクがあるため、主治医の指示に沿った継続的なフォローアップが大切です。
- Q. 抗VEGF薬の硝子体注射はどのくらいの頻度で行いますか?
- 一般的には、導入期として月1回の注射を3回連続で行い、その後は病状に応じて投与間隔を調整します。代表的な方法として、画像検査で病状が落ち着いていれば2週間ずつ間隔を延ばしていく treat & extend(TAE)法 や、再発の兆候が見られたときに注射する PRN(pro re nata)法 があります。使用する薬剤(アフリベルセプト/ラニビズマブ/ブロルシズマブ/ファリシマブなど)や病型によって適した方法が異なりますので、担当医とご相談ください。
- Q. 片眼が加齢黄斑変性と診断されました。もう片眼も発症しますか?
- 片眼に加齢黄斑変性が生じた方は、もう片眼にも発症するリスクが一般の方より高いことが知られています。反対眼が健常な段階から、定期的な眼底検査・OCT検査を受けていただくことを強くおすすめします。また、ご自宅でのアムスラーチャートによる毎日のセルフチェック、禁煙、生活習慣の改善、必要に応じたAREDS2サプリメントの使用などで、反対眼の発症・進行リスクを下げる取り組みが大切です。
- Q. サプリメントは効果がありますか?
- 大規模臨床研究であるAREDS2では、中等度以上の加齢黄斑変性および片眼に進行した加齢黄斑変性がある方に対して、ルテイン・ゼアキサンチン・ビタミンC/E・亜鉛・銅を組み合わせたサプリメントが進行抑制に有効であることが示されています。ただし、初期の方や単純なドルーゼンのみの方への上乗せ効果は限定的と考えられており、すべての方に推奨される訳ではありません。適応・用量は病期によって異なるため、自己判断でネット通販などで購入する前に、必ず眼科で評価を受けてください。
- Q. アムスラーチャートはどこで入手できますか?
- 当院でも用紙をお渡ししています。また、日本眼科学会や関連学会のWebサイトでも情報が公開されていますので、ご自宅で印刷して使うこともできます。重要なのは、毎日同じ時間・同じ明るさ・同じ距離(約30cm)で、片眼ずつチェックする習慣をつけることです。見え方にわずかでも変化を感じたら、翌日を待たずに早めにご受診ください。
- Q. 治療の費用はどれくらいかかりますか?
- 抗VEGF薬硝子体注射・光線力学療法(PDT)・レーザー光凝固はいずれも保険診療の対象です。抗VEGF薬注射は薬剤が比較的高額なため、3割負担の方で1回あたり数万円程度の自己負担が目安となります。1ヶ月の医療費が所得に応じた自己負担限度額を超えた場合は、高額療養費制度により超過分が払い戻されます。限度額適用認定証を事前に取得しておけば、窓口での支払いを上限までに抑えられます。具体的な金額は病状・薬剤・保険区分により異なりますので、診察時に目安をご説明します。
- Q. 注射は痛くありませんか?
- 硝子体注射は点眼麻酔で行うため、注射時の痛みはほとんどの方が「ちくっとする程度」あるいは「ほぼ痛みを感じない」と表現されます。手技そのものは数分で終了し、当日は普段通りに帰宅できます。注射後に目のゴロゴロ感や軽い充血が出ることがありますが、多くは数日で改善します。
- Q. 運転はできますか?
- 注射当日は、検査や散瞳の影響で数時間まぶしさ・ピントの合いにくさが続きますので、ご自身での車・バイク・自転車の運転は控えてください。公共交通機関かご家族の送迎でのご来院をお願いします。継続的な運転可否については、視力・視野の状況に応じて主治医が個別にご案内します。
見え方の違和感、早めにご相談ください
視界の中心が歪む・暗く見える・色が識別しにくい――これらは加齢黄斑変性のサインかもしれません。
黄斑は一度傷つくと元に戻りにくい組織です。早期発見・早期治療で、今の視力をできるだけ長く守りましょう。
相模原眼科では、OCT・OCTアンギオグラフィーなどの精密検査から抗VEGF薬硝子体注射まで保険診療で対応します。
〒252-0001 神奈川県座間市相模が丘5-6-19
小田急線 小田急相模原駅 南口 徒歩約5分
診療時間: 月火木金土日 9:30〜13:30 / 15:00〜17:30(水曜休診、土日午後は手術)